訪問診療、実は月に1回から利用可能ですが意外と知られていないかも?

話している医師

本日の内容を知ることで、料金が安くなる可能性もありますので、訪問診療を受ける方には是非知っていただきたい内容になっています。

ただ、最低限の基礎知識がないと分かりにくいと思います。先に、以下のふたつの記事を読んでいただくことをお勧めします。

まず、訪問診療とは、定期訪問+時間外の臨時対応(電話再診、往診)などを行うサービスであることはこちらの記事でご紹介しました。

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また、訪問診療にかかる料金については基本医療費+追加医療費で計算されます。こちらの記事で詳しく説明させていただきました。

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記事を読むと、訪問診療における定期訪問が月1回か2回かによって「在宅医学総合管理料」にも差があり、往診料と合わせると定期訪問が月1回か月2回かで基本医療費が月3000点くらい違うことがお分かりだと思います。

定期訪問が月1回と月2回では一か月につき約3000点の差。つまり体調が安定している患者さんの場合は月1回の訪問で済むならひと月あたりの診療費が自己負担が1割の方で3000円、自己負担が3割の方では9000円程度変わってくるかもしれません。訪問診療の期間が長くなればその影響も無視出来ないと思います。以下でより詳しく説明します。

目次

訪問診療の定期訪問はもともとは月2回以上だった

現在のかたちの(在宅療養支援診療所による)訪問診療が始まったのは、2006年でした。この時は、訪問診療の定期訪問は月に最低2回と決まっていました。

確かに訪問診療が必要な患者さんは体調も不安定で月2回以上訪問した方が良い方は多いです。

しかし、一方で実際には筋力の低下や身体の痛み、認知症などで通院は難しいものの、病状は安定しており診察は月1回で十分、という患者さんも割といらっしゃいます。

安定している患者さんに月2回訪問して血圧を測ったり聴診したり、おしゃべりをするだけであればこれは医療費の無駄とも言えます(後述するように、全く無駄とは言いません。コストパフォーマンスの話です)。

そこで2016年より訪問診療の定期訪問は月に1回でも良いことになりました。ただし、1回で良いのか2回以上にすべきなのかの判断は原則クリニック側にゆだねられています。病状が正確に評価出来るのは多くは医療者でしょうから、この考えは妥当と言えるでしょう。

月1回から可能という説明を受けていますか?

お伝えしたように、訪問診療の定期訪問は月1回でも成立します。もちろん月2回の時と同様に時間外夜間休日の対応などを含めた通常の訪問診療のサービスを受けることが可能です。

ところが、月1回の訪問診療という選択肢が出来たことはあまりアナウンスされていないようです。「訪問診療」と検索してみると今でも「最低月2回」という説明が散見されます。

なんとなくぼかして書かれていたり、はっきり定期訪問は月1回も大丈夫と書いていないことが多いです。まして実際に既に訪問診療を受けている患者さんや家族ですら、このことを知らない方がいらっしゃるのです。

往診医のイラスト

定期訪問が月1回で良いと説明されない理由

私は早いうちから月1回の訪問診療を行って来ましたが、確かにやってみると色々な問題が起こりました。こうしたことが起こるので、多くの医療機関は敢えて月1回をアナウンスしないのではないかと思っています。具体的には、私の考える問題は以下の3つです。

患者さんをたくさん診る必要がある

月1回の患者さんは点数の単価が月2回と比べると少ないため、クリニックの収益を維持するためにはより多くの患者さんを担当する必要があります。

把握すべき患者さんが増え、関わる訪問看護ステーションやケアマネジャーの事業所が増え、当然やるべき雑務(書類)も確実に増えます。

スケジュール調整が煩雑になる

月2回の患者さんの場合、たとえば第二・第四月曜日13時から、などと曜日や時間を揃えて予定を組むことが多いです。この方が分かりやすいからで、曜日や時間がバラバラだと間違いも起こりやすくなります。

しかし、仮に第二・第四月曜日のそれぞれに、定期訪問が一度だけの別々の患者さんが入ったとしましょう。いずれか片方が訪問終了になった場合、次に始まる患者さんが月2回定期訪問が必要であれば、この枠には入れにくいことになります。

このように、月1回の患者さんが増えるほど月2回の患者さんが受けにくくなったり、そこでまた他の患者さんに移動してもらうなどのスケジュールの組みなおしや調整が増えることになるのです。

そして、やはり月1回の患者さんは安定しており訪問診療が長期になる一方で、月2回以上の不安定な患者さんのほうが診察が終了になることが多いので、長い間訪問診療をしていると徐々に月1回の患者さんの人数が増えていきがちです。そうなると結果として月2回以上の患者さんの割合は、次第に減少する傾向となります。

軽症の患者さんも状態が変化する

開始時に比較的軽症であったとしても、一人で通院が難しいくらいの状態の患者さんは、長い時間が経過するうちに徐々に、あるいはある時に突然体調が悪くなることも稀ではありません。

すると、場合によっては「月2回訪問している患者さんよりも月1回の患者さんの方が具合が悪い」というパターンが起こり得ます。

ここで患者さんの訪問回数を増やそうとしても先ほどのお話と同様に空いている枠がなくて他の患者さんに時間を移動してもらう等の調整が必要になります。

そして、月1回の料金が当たり前になった患者さんは、定期訪問の回数を増やすことに難色を示す場合もあります。「困ったら往診を頼むから定期訪問は今のままでいい」という具合です。

しかし、本来私たちは定期訪問に行くことで事前に手を打ち、救急搬送や時間外の往診を極力減らすように努めているのです。家族によっては本当に悪くならないと気付かず連絡してくれないので、訪問医にとっても患者さんにとってもマイナス、ということになりがちです。

ですので、患者さんの体調が不安定な時は私もきちんと説明し、なるべく定期訪問の回数を増やしてもらっています。

難しい面はあるけれど私は月1回を続けます

推測ではありますが、このような難しい(あるいは、面倒な)理由があるので、月1回の定期訪問はなかなか広まらないのではないかと考えています。

ただ、私としては対応出来ないほど大変なことではないですし、訪問診療を続ける目的だけに体調が安定している患者さんに月2回訪問するのも何か違うと思います。患者さんの負担する金額も大きく異なるので、月1回のサービスも続けて行くつもりです。

まとめ

訪問診療において、病状の落ち着いている患者さんの定期訪問は月1回でも良いことになっています。具合が悪い患者さんの訪問を減らすことはリスクが大きいですが、体調が安定していると感じているのであれば、医療機関に月1回の診察を打診してみてはいかがでしょうか?

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この記事を書いた人

元ホスピス勤務医、総合内科専門医。2013年7月大田区久が原に「小原りぼんクリニック」を開業。緩和ケアと認知症診療、訪問診療をライフワークにしています。介護は、まずは家族を支えなければ始まらないをモットーに、対話を重視する診療を心がけています。

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