在宅医から見た、「いい在宅医」を探す方法。きっと参考になると思います。

往診のイメージ

これから訪問診療を受けようとしている方、既に訪問診療を始めているものの、何か担当の先生と合わないなと感じている方に、ヒントになる記事です。

2020年2月16日のAERA dot(アエラのオンラインメディア)で、栃木県小山市の医療法人「アスムス」理事長で、全国在宅療養支援診療所連絡会の太田秀樹事務局長は「いい在宅医」を探すための条件として以下を挙げています。

1.自宅から近い
2.訪問看護師やケアマネジャーと連携がとれている
3.看取りの実績

の3点です。更に前になりますが同じAERA dotの2015年11月30日の記事では、日本尊厳死協会副理事長を務める長尾和宏医師が「いい在宅医」を探すポイントを次のように話していました。

1.自宅から近いこと
2.医師との相性
3.看取りの実績がある

比べてみると条件の「2」は異なりますが「1」と「3」は同じです。そして「2」の両者において共通するのは、医師が良好なコミュニケーションがとれるということではないかと私は理解しており、そう考えるとだいたい同じことを言っていると思います。以下、少し詳しくお話したいと思います。

目次

ポイント1.自宅から近いこと

いい在宅医を探すポイントに、「家から近いこと」が挙げられているのは、「え、そんなこと?」と不思議に思う方もいらっしゃると思います。自宅からの距離がそんなに大事なのでしょうか?

実はこれは、非常に大事なポイントだと思います。経験上、患者さんの自宅からの距離と訪問診療の質は見事に反比例になっていると感じます。

それは、やはり「何か困ったことが起こった」時の反応の速さです。想像して頂ければお分かりだと思いますが、5分で到着する患者さんの家と、片道30分かかる家ではどちらがすぐに対応出来るでしょうか。

移動に必要な往復時間だけでなく、他の患者さんの診察の合間に臨時の往診があることを考えると、滞在時間も限られてしまう可能性もあります。

つまり、いい在宅医の特徴のひとつは困った時に迅速に質の高い対応してくれることで、そのためには地理的に近いことは非常に有利ということなのです。

往診する医師

ポイント2.良いコミュニケーションがとれる

太田秀樹事務局長と長尾和宏医師の挙げた特徴を、ひとつに合わせて表現してみました。連携の上手さはだいたいコミュニケーションのとりやすさと相関しますので、連携が上手な医師は患者さんや家族にとっても話しやすい医師が多いのではないでしょうか。

これは医師として、在宅医だけでなく病院の医師にも同じことが言えるかもしれません。しかし、医療面だけでなく病院よりずっと長く患者さんの人生や生活に関わり、多様なニーズに応えていくには、より緊密な連携・高いコミュニケーション能力が求められると思います。

また、私の考えになりますが、コミュニケーション能力ということで更に言うと、①不機嫌にならず対話が出来る医師、②自分の理念やポリシーを脇に置き、耳を傾けられる医師、そして③必要な時にきちんと時間を割いてくれる医師が良いのではないでしょうか。

ポイント3.看取りの実績がある

なぜ看取り実績が重要なのか

看取りの実績がなぜ重要かと言うと、看取りは在宅医にとって結構大変だからです。話し合いに時間がかかり、いつ電話や往診依頼があるか分からない、治療薬の追加や変更も頻繁に必要になります。

正直な話、訪問診療は体調が不安定な看取り時期の患者さんをひとり診るより、落ち着いた患者さんをたくさん診るほうが楽で儲かります。

同時に、間接的に看取りの医療を行う医師ではコミュニケーション能力やマネジメント能力を推測出来るということも言えるでしょう。記事の中で、太田秀樹事務局長はこう話しています。

実績は「年間の合計診療患者数」と「看取り件数」から見ることが大切で、患者数の3分の1ほどを看取っていればしっかり診ていると考えていい。逆に、何千人もの患者がいるのに看取り件数が数十人というところは、看取りが必要な患者を避けているなどの可能性がある。

もちろん、患者さんが1年で何人亡くなるかは運もあるでしょう。しかし、普通にやっていれば看取り実績や看取り率は増えますので、看取りの実績はある程度、その医師の訪問診療に対する熱意を反映すると言えるでしょう。

ただし、気を付けないといけないこと

しかし自然に看取りの実績が多くなるのは良いことですが、一方で医療機関があまり「看取り率」「看取り数」にこだわり過ぎてしまうとそれも問題となり得ます。自ら看取り率を公表しているところは少し注意かなと思っています。

こだわった結果、「実績を上げるために」患者さんを在宅に繋ぎとめるようになってしまう危険があるからです。こうなると本末転倒です。

ここは私の考えになりますが、「在宅看取り史上主義」ではなく、その場の患者さんや家族の気持ちを聞き、柔軟に、臨機応変に対応してもらえるという点も重要なのではないかと思います。

まとめ

在宅医の考える「いい在宅医」は共通点がありそうです。自宅からの距離は迅速で質の高い対応に関係し、コミュニケーション能力が高いことは言うまでもなく、そして熱意を推測する指標として看取り実績が挙げられているのです。

もちろん、ほかにも医師の専門性や時間外の体制などの条件もあります。なかなか難しいこともありますが、自分がどのような医師を希望するかイメージが出来れば、あとはケアマネジャーや訪問看護師に相談し希望に近い医師を見つけてもらうのが良いでしょう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

元ホスピス勤務医、総合内科専門医。2013年7月大田区久が原に「小原りぼんクリニック」を開業。緩和ケアと認知症診療、訪問診療をライフワークにしています。介護は、まずは家族を支えなければ始まらないをモットーに、対話を重視する診療を心がけています。

コメント

コメントする

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

目次